【本編01~02 冒険編】「旅立ち」
大人も楽しめる絵本のイメージで物語を書いています。
よかったら読んでください😊
#本編01 冒険編
いよいよ、ムーンピーチ・フラワーと定住地を探す、南部サウディア地方への旅の始まりです。
リーフがテラに言いました。
「テラ、この旅の間、ぼくが君を守るから!」
「ありがとう、リーフ^^ リーフとふたり旅だけど、傍から見れば、私、ひとり旅だものね」
精霊は守り人にしか見えず、声も聞こえないので、テラにとってはふたり旅でも、普通の人にはテラのひとり旅にしか見えないのです。
「そうだよ、テラを危ない目には合わせないから。ぼくが守るよ」
「ふふ、頼もしいのね^^ リーフが居るから私は何の心配もしてないよ^^」
「でも、テラはぼくの力のことをあまり聞かないね」
「そうねぇ。リーフが力を使ってるとき、感情的なとき?目が光るでしょ」
「よく見てる笑」
「毎日の薬草採取のときだって光ってるもの。
血を飲んだ後も、大きくなった時も、泣いてた時も、昨日も。
リーフがなにかしらの力を使ってるんだな、とは思ってたよ。だけど、聞いていいのかわかんなくて 笑」
「聞いていいのに。テラには教えるよ^^」
「わかったわ^^ 今度からは聞くことにするね^^」
ふたりは、町と町の間を運行する定期便の旅客馬車に乗るために、村の中心部にある停留所へやってきました。
ここからブライトウッドの村を出て、ブライトウッド・トレイルを進み、北部と南部をつなぐ大きな街道ノーサンロードに入ります。
ブライトウッドとノーサンロードを結ぶブライトウッド・トレイルは300kmほどあり、途中で2泊してノーサンロードの分岐点にある町、フォークスエンドを目指すのです。
#本編02 冒険編
初めての旅客馬車。
旅客馬車は中型の8人乗りで、テラを含めて5人が乗り合わせるようです。
テラは少しドキドキしています。
旅客馬車に1日揺られ、まずは100km先の町を目指すのです。
テラは小声でリーフに話しかけます。
「旅客馬車は初めてなのよ。天気もいいし、なんだかワクワクしちゃう^^」
「ぼくも初めて!色んな人が乗るんだね」
「そうね^^ みんな荷物が重そう。リーフに感謝だわ^^」
「どういたしまして^^」
テラの旅の荷物はすべてリーフのどんぐりの中に仕舞ってあるので、テラは手荷物だけを持っているため、これから数か月の長い旅をする旅人にはとても見えない身軽さです。
しかし、テラにとって初めての旅客馬車は、慣れないせいかとても疲れたようで、血の契約のおかげで痛い箇所などはありませんが、夕方にはすっかりくたくたになってしまいました。
少し肌寒くなった夕暮れ、ブライトウッドから100kmほど離れた町の停留所に到着し、翌日の旅客馬車の予約を済ませたふたりは、この町でふたりの記念すべき1泊目の宿を探します。
夕暮れの町を歩きながら、テラはいつものようにリーフに話しかけました。
「ねぇリーフ、この町には美味しいお茶屋さんあるかなぁ?」
「あっちの通りのほうから、テラの好きそうなハーブの匂いがするよ^^」
そのとき、近くを通りかかった少年が不思議そうな表情でテラを見ました。
テラは慌てて笑顔で応えます。
「あ、えっと…ただの独り言だから気にしないで…」
リーフは笑いながらテラに言いました。
「気をつけてね、テラ。独り言が増えると、みんな驚いちゃうよ笑」
大きな通りの角を曲がると、こじんまりとした宿を見つけました。
宿の看板には「リリィロッジ」と書かれ、窓からは温かな光が漏れています。
宿のすぐ横には食堂もあり、焼いたお肉の美味しそうな匂いが漂っています。
「宿、早く見つかってよかった^^ すぐ横に食堂もあるわ^^」
「うん、よかった^^ あとは部屋が空いてるかだね」
「そうね。あと、薬草を買い取るお店がないか宿主さんに聞いてみよう」
ふたりが宿に入ると、優しそうな宿主が迎えてくれました。
部屋は空いてるとのことで、テラが宿主に尋ねます。
「この町に薬草を買い取るお店はありますか?」
「この通りをまっすぐ行ったところに薬屋がありますよ。新鮮な薬草ならきっと高く買い取ってくれるでしょう^^」
宿主がにこやかな笑顔で教えてくれました。
「ありがとうございます^^近くに薬屋さんがあるんですね。明日行ってみます^^」
テラはお礼を言い、リーフと一緒に2階の部屋へ向かいます。
宿の部屋に入り、ふたりきりになってホッと一息つきます。
「馬車での移動ってすごく大変なのね…あちこち痛いとかは無いけど、なんだかとても疲れた…」
「お疲れさま^^ ここ、温泉があるみたいだし、入ってくる?」
「え。温泉あるの?うれしい!あ、お部屋にあるのかしら」
テラは部屋の中を一通り確認しました。
「家族湯っていうのかな。小さな湯舟があったよ!リーフも入る?」
「え!ぼくはお風呂に入らなくても清潔は保たれているし、今までだって入ってなかったでしょ」
「でもせっかくの温泉だよ?」
「いや、あの…服脱げないから…」
「え!リーフの服って脱げないの!?」
リーフの服は脱げない、、、衝撃の事実。
「こ、この服は精霊の力で生成されてて…服だけど服じゃないっていうか…
マントもマントじゃないっていうか…脱ぎ着するようなものじゃないの(消せるけどね…)」
「へ、へぇぇ……そうなのね……じゃあ、そのまま入る?」
「え!さすがにそれは…」
「そうね、さすがにその服みたいなもの?を着たままじゃ、入りにくいよね 笑」
「ごめんね…」
こうしてテラは、ちょっと寂しいなぁと思いつつも、ひとりで温泉に入り、ゆっくり旅の疲れを癒しました。