The Acorn Spirit's Journey

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【本編19 日常編】「約束」

【本編19 日常編】「約束」

大人も楽しめる絵本のイメージで物語を書いています。
よかったら読んでください😊


 

#本編19 日常編

800年前。

ぼくが生まれてから100年くらい経ってからだったかな

あの神殿に、とても甘くていい匂いがする彼がやってきたのは

アクォリア神殿はぼくが生まれる前に
人の手によって建てられた神殿で
ブライトウッドの村はどんぐり信仰が盛んで
アクォリア神殿はどんぐり信仰の中心だった

そういった背景があって
ぼくはアクォリア神殿に宿ったんだ

100年の間に何人かの守り人が神殿に来たけれど
契約したいと思ったのは彼が初めてだった

とても甘くていい匂いがする彼と血の契約をしたくて
彼が神殿に来た時に、ぼくは彼の前に姿を現した

血の契約をすると不老不死になる事、
血をもらう代わりに、ぼくが力を貸す事、
それともうひとつ、テラにはまだ言ってない事も含め
彼に話したんだ

ライルは「考えさせてほしい」と言って帰ったんだ

それからしばらくして、”守り人にはなれない”ときっぱり断られてしまった

ところが、気落ちしていたぼくの所に再び彼が現れて
「力を貸してほしい、血の契約がしたい」と言ってきたんだ

当時不作になっていた田畑を
ぼくの力でどうにか出来ないかと考えてのことだった

もちろんぼくは力を使った
ライルはとても驚き、感謝してくれた

そして、ライルとの血の契約

ライルには家庭があって、妻子がいると言っていた
不老になったら不審に思われるからと、妻子を残して3年で村を出ると約束した

家族は大切だけど、ぼくのことも大切だと言っていた
ぼくの存在は大陸中を豊かにする、と
そんなぼくの守り人になれるのは大変光栄だ、と

ぼくのために毎日神殿に通い
ぼくとたくさん話をしてくれた
たくさん未来の話をした

本当は毎日血が欲しかったけど
そんな優しいライルには言えなかった

3年後、ふたりで村を出たら
その時になったら
“血と力”のことを言おうと思ってた

 

3年目の夏

村を出る準備をと考えていた矢先
皆既日食でぼくの守護が消失したその時
たった数分の間にライルの血の匂いが、気配が、途絶えた

ぼくがしっかり力を高めていたら
ずっとライルのそばに居たら
ライルを死なせずに済んだかもしれないのに
あの時のぼくは何もできなかった

ぼくと共に永遠を生きる決断をしてくれた初めての守り人
ぼくが初めて永遠の愛と絆を誓った大切な守り人
とても懐かしくて、とても悲しくて、とても大好きな匂い

 

リーフは約束が果たせなかったライルへ思いを馳せるのでした。

 

過去の守り人ライル