【本編22~23 日常編】「吾亦紅」
大人も楽しめる絵本のイメージで物語を書いています。
よかったら読んでください😊
#本編22 日常編
リーフとテラ、ふたりの生活が始まって30日が経ちました。
「リーフのおかげで、薬草がたくさん採取出来て、たくさん売れて、旅の資金も十分になったわ^^
本当にありがとう、リーフ^^ これで、いつでも出発できるね^^」
「どういたしまして^^ じゃあ、そろそろ挨拶行くの?」
「ええ。今日は薬草茶を持ってお世話になった人たちに挨拶しに行くわね^^」
テラはいくつかの薬草茶にフジバカマの花を添えて、旅の挨拶回りに行きました。
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タリス「テラちゃん、いよいよ行ってしまうんだね」
テラ「はい。タリスおじさん、リアナおばさんにはいつも薬草や薬草茶を買い取っていただいて、本当にお世話になりました^^」
リアナ「テラちゃんが最近急にたくさんの薬草を毎日売りに来るから、どうしたのか尋ねたら、旅に出るって言うじゃないか。ほんとに驚いたよ」
タリス「テラちゃんが持ってくる薬草はほんとに質が良くて新鮮だから、助かってたんだよ?なぁ?」
リアナ「ほんとだよ。テラちゃん居なくなったら困ってしまうねぇ。お世辞なんかじゃないよ?ほんとなんだから。」
テラ「ありがとうござます。そう言っていただけて嬉しいです^^」
タリス「寂しくなるけど、いつでも帰ってくるんだよ?」
リアナ「ああ、そのときはまた、たくさん薬草持っておいで 笑」
テラ「ふふ、分かりました^^ こっちに帰ってきたら薬草持ってきますね^^
今日はご挨拶に薬草茶を持ってきたので、これはぜひ飲んでくださいね!
癒し効果のある薬草茶です^^」
リアナ「おや、フジバカマが添えてあるわ^^ 花選びがさすがテラちゃんだね。お茶もありがたくいただくよ^^ 本当にありがとう」
タリス「テラちゃん、一人旅は危ないから十分気を付けるんだよ」
テラ「はい、ありがとうございます^^」
リーフは3人のやり取りをテラの肩に乗ったまま見ていました。
(フジバカマ、いつ摘んだのかな。気付かなかったな)
テラからフジバカマを贈られて、リアナおばさん喜んでたな、と、ちょっと羨ましく思ったのでした。
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「テラちゃんがいなくなるなんて…」
マーサおばさんはショックを隠し切れない様子です。
「マーサおばさん…そんなに悲しまないでください。また会えるから」
「でも、サウディアへ行くんでしょう?とても遠いわ…
テラちゃんに何かあったら…私、もうどうしたらいいか…」
マーサおばさんは心配で心配で、オロオロしています。
「きっと、大丈夫です^^ 心配しないで。そうだ、手紙書きます!手紙、楽しみに待っててください^^」
「そう?…きっとよ?待ってるから。旅の途中で、元気にしてるって手紙書いてね?必ずよ?」
「はい^^ 必ず書きますから!」
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薬草の卸店のタリスおじさんとリアナおばさん、マーサおばさん、お隣さん、向かいの老夫婦のおじいさんとおばあさん、ご近所の人たちへの挨拶回りを終えたテラは少しの寂しさを覚えましたが、
それ以上に、リーフとの新たな旅立ちに胸が躍るのでした。
#本編23 日常編
旅の挨拶を済ませ、準備も整え、旅客馬車の予約も済んで、いよいよ、旅立つ日です。
リーフへ毎日血をあげるようになってちょうど30日、ふたりの生活は33日目になりました。
「これで、このブライトウッドとも暫くお別れね」
「そうだね……テラ、ちょっと待っててくれる?」
リーフはテラの肩からふわりと地面に降り、力を使います。
「思い出がいっぱいある大切な場所だから、広範囲に…ルートヴェイル」
リーフの緑色の瞳がエメラルドのようにキラキラと輝き、足元から光の波が現れ放射状に広がっていき、その光は地面に溶けていきました。
「ありがとう、リーフ。ここには思い出がいっぱい詰まってるね。
でも、また帰って来られるわ。
3年以内くらいだったら戻っても大丈夫だと思うし。ね^^
さあ、行こう!」
「うん、行こう。ぼくたちの旅の始まりだね!」
「それと、リーフ。これをあなたに^^」
テラはリーフに吾亦紅を1本、渡しました。
小さなリーフが持ちやすいよう、長さは短くカットされています。
茎の部分には小さなかわいらしい緑色のリボンが結ばれていました。
「え、ぼくに?」
「そうよ^^ リーフに。吾亦紅、かわいいでしょう?^^」
「あ、ありがとう!すごくうれしい…吾亦紅…花言葉…(!)…だ、大事にするから!ずっと!」
「ふふ、では、出発しますか^^」
こうしてリーフとテラは、アルダス大陸はエルディン王国南部、サウディア地方へ向かう旅に出発しました。
リーフは生まれて初めて贈られた、テラが贈ってくれた吾亦紅の花を、大切な宝物を扱うようにどんぐりの中にそっと仕舞いました。