【本編08 冒険編】「ウェストクロス1」
大人も楽しめる絵本のイメージで物語を書いています。
よかったら読んでください😊
#本編08 冒険編
フォークスエンドから15日間ほど歩いて、西部アウリス地方へ行く分岐点の町、ウェストクロスに到着しました。
ウェストクロスは、テラの故郷であるブライトウッドの村から約600kmほどの地点にあります。
ウェストクロスの南側にはエルナス森林地帯が広がっていて、この森林地帯は東西約800km、南北約500kmのたいへん広大な森林で、人を寄せ付けない未開の地です。ノーサンロードは森林地帯を避けて迂回するように通っており、ウェストクロスより南下していくと、次の町までが遠く人家もまばらになっていきます。
「ねぇリーフ、ウェストクロスもかなり栄えた大きな町ね」
「アウリス地方への分岐点だからね。いつか西側にも行ってみたいね^^」
「南の次は西に行く? 太陽が海に沈む景色を一度見てみたいな^^ きっとすごく美しいと思うのよ」
テラが住んでいたブライトウッドから海はそれほど遠くではないのですが、西の海ではないため太陽が海に沈む景色を、テラはまだ見たことがありませんでした。
ふたりはウェストクロス周辺の地図を見ながら、これからの宿泊について相談をします。
「ここから先は、町が少なくなるのね」
「エルナス森林地帯が近いからね。次の町までは馬車で1日で行けるけど、その先の町はずっと遠くて馬車でも1日はキャンプ地に泊るみたいだよ。もう15日間歩いてきたし、次は馬車にする?」
「うーん、そうね。まだ一度も野宿をせずにここまで来れたけど…私は野宿でも平気よ。野宿の準備はしっかりしてきたものね^^」
ブライトウッドの村を出て20日ほど経ち、そのうち15日間は徒歩の旅でしたが、村や町が点在し宿に泊まることが出来たため、野宿をする機会はこれまで一度も無かったのです。
「うん、野宿の準備は完璧^^ 火も起こせるし鍋もあるし、テントも毛布も雨具もちゃんと持ってきたからね^^ 食料と水は10日間くらいは補充せずに行けそうなくらいはあるよ。
でも、念のためにウェストクロスでもう少し補充はしておくほうがいいかな」
「わかったわ^^ 明日は買い出しして、野宿のために色々補充しよう^^」
「そういえば明日だけど、おまつり、行く?」
「宿に来る途中の案内板にあった豊穣まつりよね!行ってみたいわ!^^ 露店もいっぱいあるよね!」
ウェストクロスはちょうど秋の豊穣まつり期間です。
ふたりは明日、まつりの中心になっている中央広場へ行くことにしました。
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翌朝。
フォークスエンドでは市場で買い物をしましたが、ウェストクロスでは市場には寄らずに秋の豊穣まつりの中央広場に来ています。
果物の甘い香り、焼いたお肉の美味しそうな匂い、はしゃいで走り回る子供たち、買い物を楽しむ多くの人たちで秋の豊穣まつりは賑わいを見せています。
秋の豊穣まつりでは、新鮮な果物や野菜が並ぶマーケット、地元の料理や飲み物を提供する屋台、工芸品や特産品などが広場いっぱいに並んでいるのです。
ふたりは中央広場の入り口近くの工芸品を展示した一角にやってきました。
パッとテラの目を引いたのは、真珠のように輝く大きな貝殻でした。
「うわぁ、とてもきれい!こんなにキラキラした貝殻があるのね」
「いらっしゃい。これはアワビという巻貝で貝殻は装飾用として使われててね。こっちのヒオウギ貝もいろんな色があってきれいでしょう?色んな種類の貝殻を使って加工してペンダントにしたり、ブローチにしたりするのよ。こっちに来てみて」
店主のきれいなお姉さんが綺麗な貝殻を加工した工芸品の装飾品売り場に案内してくれました。
「わぁ…どれもすごくきれい…」
色とりどりの貝殻を様々な形に加工した髪飾りやペンダントトップ、ブローチなどが並んでいます。
「あ!これ!」
テラが見つけたのは、葉っぱの形に加工された緑色のペンダントトップでした。
「これ、触っても大丈夫ですか?」
「どうぞ^^ 手に取ってみていいのよ」
テラが緑色のペンダントトップをそっと手に取ると、光にあたってキラッとして、まるでリーフの瞳のようです。
「これ欲しい…いくらするんだろう…」
「テラ、こっちの青いのはどう?(テラの瞳の青!)」
リーフが指したのは、花の形に加工された青色のペンダントトップです。
店主のお姉さんがテラに声を掛けました。
「この緑色のペンダントトップは4,500ŞĿ※よ。緑はあまり無いからちょっと高めなの」
「4,500ŞĿ…薬草6把か7把分……あの、こちらの花の形の青いのは?」
「こっちは3,000ŞĿね。ちょうどあなたの瞳みたいな青ね^^」
「(!)は、はい…」
テラは少し考えます。テラからするとかなり高い買い物で、しかも特に必要のない装飾品です。
それでも、テラは決めました。
「あの、緑色と青の両方とも買います!」
「まあ!ふたつとも買ってくれるの?ありがとう^^ 皮の紐をつけて、代金も7,000ŞĿにおまけしちゃうわ」
※エルディン王国の通貨 ŞĿ(シルヴァ)
「どうしよう…買ってしまった…で、でも!欲しかったから!」
「テラ、ちょっとどこか…誰にも見られないところに行けない?」
「?…宿に戻る?」
「それでいいよ」
「わかったわ。でも、どうして?」
「うん、ちょっとやりたいことがあって。人がいないほうがいいから」
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宿に戻り、部屋へ入るなり、リーフはぼんやりと体全体から光を発しながらテラと同じ背丈ほどの姿に変化しました。
「テラ、買ってきたペンダント、着けるよね?ぼくが着けてあげる^^」
「やりたいことって、ペンダント?」
「そう^^ 人がいるところでぼくが着けてあげたら、おかしなことになるでしょ 笑」
「確かに^^」
リーフは普通の人には見えないので、人がいる場所でリーフがテラにペンダントを着けてあげると、着けた瞬間にテラの首にペンダントが出現することになり、それではあまりにオカシイのでリーフは人目を避けたかったのです。
「どっち着ける?ふたつとも着ける?」
「私はリーフの瞳の色に似た緑色のペンダントを着けるから、青いペンダントはリーフが着けてくれないかな。こういうの着けるの、嫌?かな」
「え!全然嫌じゃないよ!どっちもテラが使うと思ってたから…」
テラは、緑色は自分用で青色はリーフにと、最初からそう思って2つ買っていたのです。
「じゃあ、まずは私が着けてあげる^^」
リーフの首に、テラの瞳と同じ色のペンダントが掛けられました。
「次はぼくが!」
テラの首にもリーフの瞳と同じ色のペンダントが。
「ふふっ おそろいね^^」
光に当たるとキラッと輝いて、とてもきれいなおそろいのペンダントにテラはご満悦です。
しかしながら、明らかに予定外の出費となったので、薬草を買い取ってもらうのが先!ということで、午後は薬草の卸店へ直行したのでした。
リーフはしばらくの間、テラの瞳の色をした青いペンダントをぎゅっと握りしめていました。