【本編09 冒険編】「ウェストクロス2」
大人も楽しめる絵本のイメージで物語を書いています。
よかったら読んでください😊
#本編09 冒険編
午前中はペンダントを買っただけで宿に戻ったので、午後、薬草の卸店で薬草を買い取ってもらった後は、再び豊穣まつりの中央広場へやって来ました。
「何を補充しておこうかしら」
「肉やチーズ、パンがいいんじゃないかな。それと、お菓子?笑」
「そうね^^ 甘いお菓子は必要だわ 笑」
しばらく歩いていると、パンを売っている屋台がありました。
「あ!このパン、ナッツ入りだわ!」
店主のおじさんがテラに声を掛けます。
「いらっしゃい!このくるみパンは一番のおすすめなんだ!それから、ハーブ入りのこれ!ローズマリーパン!これもおすすめだよ!どうだい?買っていかないかい?」
「わぁ!ローズマリーパンもあるのね!くるみパンも美味しそうだし…」
テラはちょっと迷います。じつは最近、食事の量が増えた気がするのです。
「テラ、両方買ったら?どんぐりに入れておくから、買いすぎても大丈夫だよ^^」
悪魔のささやきのようなリーフの声。
「そうよね^^ すみません、ローズマリーとくるみのパンを3個ずつください^^」
「はいよ!お嬢さん、ありがとう!ひとつおまけしとくよ^^」
「わあ!ありがとうございます!^^」
鮮度そのままで保存しておけるリーフの依り代、どんぐりがあるおかげで、買い過ぎても問題が無いのをいいことに欲望に任せて買い物をして、さらに食べ過ぎている気がしてならないテラは、リーフに聞いてみました。
「ねぇリーフ、私最近、食べすぎじゃない?」
「そう?毎日いっぱい歩いてるし、もっとたくさん食べていいと思うよ^^」
「たしかに、食べないと歩けなくなっちゃうわね。気にし過ぎかな」
「気にし過ぎだね^^」
「うーん…リーフがそういうなら、いいのかな。ははは…」
再び歩いていると、肉を焼く香ばしいタレの美味しそうな匂いが漂ってきました。串焼きのお店です。
「ねぇ!すっごく美味しそうな匂いよ!」
「串焼きは賑わっているこの雰囲気を味わいながら食べるのが良いよね^^」
「そうね。でも、私ひとりで…」
「いいのに 笑 ぼくのことは気にしないで食べて^^」
リーフが食事をしないことは分かっている事で、いつもひとりで食事をするテラですが
この時ばかりは、リーフも一緒に食べられたらきっと楽しかったのに、と少し残念な気持ちになりました。
「そういえば、熱いものってどんぐりに入れられるの?」
「どうだろう?今まで熱いものを入れたことは無かったね。どうなるか、試してみようか?」
「いや…それもなんだか悪い気がするわ…」
「?なにが悪いの?」
「だって、リーフが顕現するための依り代なのに、串焼きを熱いまま保管できるか、なんて…欲望が過ぎてなんだか罰当たりな気が…」
「あはははははは。 ぼくがいいって言ってるんだから、気にしないで 笑」
「そう?…それじゃ、串焼きを2本買うわ…」
「どうぞ 笑」
ふたりは人目につかない場所を探し、建物と建物の間の隙間に隠れるようにこっそり入りました。
「誰にも見られなかったかな」
「ちょっと待ってね、大きくなるから^^」
リーフはぼんやりと体全体から光を発しながらテラと同じ背丈ほどの姿に変化し、テラから2本のあつあつの串焼きを受け取ります。
串焼きを手にしたリーフはどんぐりに消え、再び現れました。
「串焼きは熱いままどんぐりの中に置いてきたからね^^ 次に出すとき、熱いままだったら最高だね 笑」
「植物や食べ物の鮮度はそのままだけど、温度はどうなんだろうね」
「冷めてたら残念だし、1本は今食べたほうがいいんじゃないかな?」
「ううん、大丈夫よ^^」
「そう?…」
「ねぇリーフ、そのまま大きい姿で一緒に見て回ろうよ^^ 手を繋いで。どう?」
「!! い、行く!」
「ふふっ^^ はい、手をどうぞ^^」
テラはリーフの手を取り、指を絡めてしっかり握りました。
「これで迷子にならないわね^^」
リーフもテラの手を離さないよう、しっかりと握り返します。
(手のひらが密着しててテラの手がとても温かい…もうこのままずっとこのままでいいかも…)
お互いの瞳の色をしたペンダントを首にかけ、手を繋いで歩く姿は仲睦まじく見えそうですが、精霊は守り人にしか見えません。
リーフが迷子になったら、見つけられるのはテラだけ。
もちろん、リーフが迷子になる事は無いのですが、ふたりは離れないようにしっかり手を繋いで豊穣まつりを見て回り、干し肉とチーズ、ハニーキャンディも買って、まつりを思う存分堪能して宿に戻ったのでした。