【本編12 冒険編】「新たな出会い」
大人も楽しめる絵本のイメージで物語を書いています。
よかったら読んでください😊
#本編12 冒険編
翌朝、リーフは元の小さい姿に戻っていました。
「おはよう、リーフ。大きいまま寝たのは初めてだったけど、よく眠れた?^^」
「おはよう、テラ。そうだった…ごめんね。寒かったよね?」
「大丈夫よ^^」
(手をつないで一緒に星が見たかったのに…眠くなっちゃってあまり覚えてないし…大きいまま寝ちゃってテラは寒かったと思うし…もうしない…)
いつもはテラの枕元あたりで寝ているリーフですが、大きいまま寝てしまって、テラが寒かったんじゃないかと気になってしまい、大きい姿で寝てしまったことを後悔したのでした。
「寒いけど今日もいいお天気よ、リーフ^^ 支度して、出発しようか」
「うん、そうだね。テントも壁も、きれいに均しておくよ」
朝からちょっとしょんぼりなリーフでしたが、緑のテントと壁は力を使って均して、荷物も片づけて、出発します。
リーフとテラは、今日もノーサンロードを南へと歩いて進んで行くのです。
お昼ごろ、ふたりが沿道の少し開けた場所で休憩していると、一人の年配の男性が近づいて来るのが見えました。
男性は少し重そうな荷物を背負っていて、どうやら旅人のようです。
「テラ、向こうから来る人、守り人だよ」
「え!初めてだよ、私以外の守り人さん!」
だんだんと近づいてくる年配の男性は、テラの前で立ち止まりました。
「こんにちは。君、守り人だよね?」
優し気な面持ちの年配の男性が声をかけてきたので、テラは驚きつつも返答しました。
テラ「は、はい!こんにちは!」
(そっか。守り人だからリーフが見えるのね!)
リーフ「彼には精霊がついていないみたいだね」
リーフの声を聞いた年配の男性は笑顔で言いました。
年配の男性「そうなんだ。以前、一度だけ精霊と契約したことはあるんだけどね。今はひとりなんだ」
(リーフの声も聞こえるんだわ。ほんとに守り人さん!リーフと会話なんて、すごく新鮮な光景!)
自分以外の守り人に初めて会ったテラは、守り人に親近感が湧いて、にこやかに声を掛けました。
テラ「ひとり旅をされているんですね^^」
年配の男性「ああ、俺はずっとひとり旅でね。西から来てウェストクロスにしばらく滞在していたんだ。今日はこっちに用事が出来たんでノーサンロードを南下しているところで…」
そんな会話をしていると、突然、木々の間から柔らかな小さな光が現れ、その光の中から精霊が姿を現しました。
「こんにちは。お邪魔してごめんなさい。私はユズリハの精霊よ。あなたと契約したいの」
優しく微笑むユズリハの精霊に、年配の男性は驚きつつも喜んで言いました。
「ユズリハの精霊、俺と契約してくれるのかい?」
守り人と契約をしていない精霊はむやみに姿を現しません。
精霊が守り人の前に姿を現すときは、契約したい時なのです。
「ええ、そのつもりで顕現したのよ」
そう言って、ユズリハの精霊はニッコリと微笑みました。
沿道には、たくさんのユズリハが枝を広げていました。
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「私の契約方法は簡単よ。手の甲にキスするだけでいいわ。契約すると守り人は若返るわ」
そう言って微笑む精霊の言葉に、年配の男性の守り人は冷静に訊ねます。
「わ、若返るのか。すごいな……だが、聞いていいかな。契約の代償や他に何か、契約前に知っておくべきことはあるかい?」
「私の守り人は、世代交代するの。それでもいいかしら」
「世代交代…離れる時が来るってことか。その時は寂しくなると思うが…
俺は精霊と過ごす時間はとても貴重だと思ってるんだ。守り人にしか出来ないことだ。守り人であることを俺は誇りに思ってる。だから、契約したい」
年配の男性の守り人は、守り人としての強い意志と誇りをもっており、ユズリハの精霊との契約を望みます。
「わかったわ。そういう人、けっこう好きよ。私の手を取ったほうの手首に私の紋が刻まれるわ」
ユズリハの精霊が優しく微笑みながら手を差し出すと、守り人の男性は片膝をついて右手で精霊の手を取り、騎士のように精霊の手の甲にキスをしました。
すると、キスをした精霊の手の甲から小さな光の粒の渦が発生し、守り人の男性をあっという間に飲み込みました。
やがて、その光の渦は守り人の男性の右手の手首に収束し、年配だった男性は青年に若返っていました。
「私の新しい守り人、私の名はヘリックス。あなたは?」
「俺の名前はファラムンド。よろしく、ヘリックス!
しかし、驚いた。一瞬で本当に若返った。これは…20代くらいか?すごいな……で、たしかに、右手首に紋が刻まれたよ」
ファラムンドは自分の体や顔を触り感触を確かめ、自分の手を見て、若返ったことを実感します。
「ファラムンド、長いわね。ファルでいいかしら? かっこよくなって驚いちゃったわ 笑
それと、年齢は22歳よ。ファルから感じた最も鮮明な記憶の年齢まで戻したわ」
「ファルでいいよ!そうか、22歳。確かに俺の人生の中で一番、鮮明な記憶がある年だ」
(鮮明というか22歳の時しかないくらいだったわ。どんな生き方してたらこうなるのかしら?ファルは22歳のままだった?22歳の時期が長かった?それに、ファルの血の匂い。まさに精霊好みね。契約にも躊躇しない。もしかしてファルは…)
その様子を傍から静かに見ていたリーフとテラ。
「ユズリハの精霊さん…花言葉は”若返り”と”世代交代”ね」
(リーフもだけど、精霊は花言葉に由来した特性を持ってるのね)
テラのつぶやきにリーフはドキッとしましたが、気を取り直して、リーフはヘリックスに声をかけました。
リーフ「ヘリックス、と呼ばせてもらうけど、ヘリックスはここにいるの?ぼくたちはもう行くけど」
ヘリックス「あなたたちは旅をしているのね。そうね……私も一緒に旅をしようかしら。いい?」
突然のヘリックスの提案にリーフもテラも驚きますが、テラは好意的に受け止めました。
テラ「ええ、私は大歓迎!人数が増えたら楽しいよね、リーフ?」
リーフ「あ、うん、テラがいいなら、ぼくも」
ヘリックス「ありがとう^^ ファルはどうする?」
ファル「俺はヘリックスのいるところなら、どこへでもお供するよ」
そういってファルはニカッと笑います。
ヘリックス「それじゃあ、私の依り代はこれね。この果実を持っててくれる?」
ヘリックスはニッコリ微笑みながらユズリハの果実をファルに渡しました。
ヘリックス「ユズリハの果実には毒があるから食べないでよ 笑」
ファル「毒がなくても、さすがに依り代は食べないよ 笑」
こうしてリーフとテラの旅に、ヘリックスとファルが加わったのです。