【本編13 冒険編】「依り代の使い方」
大人も楽しめる絵本のイメージで物語を書いています。
よかったら読んでください😊
#本編13 冒険編
リーフとテラの旅に、ユズリハの精霊ヘリックスと守り人のファラムンド(ファル)が加わり、4人の旅が始まりました。
4人はゆっくりと歩きながら、それぞれ自己紹介をします。
テラ「私はティエラ、テラって呼んでくれたら嬉しいわ。私は薬草採取をしてるの。よろしくね!」
リーフ「ぼくはどんぐりの精霊、リーフ。よろしく」
ファル「俺はファラムンド、ファルでいいよ、若返ったし、気軽に話してな。よろしく!テラ、リーフ!」
ヘリックス「私はユズリハの精霊、ヘリックスよ。テラもリーフもよろしくね」
ファル「ところで、ふたりはどこへ向かってるんだ?」
行き先も聞かずに共に旅をすると決めたファルは、改めて、行き先を尋ねます。
テラ「私たちはノルデンの村を出て、サウディア地方へ向かってるの。サウディアには、ノルデンでは見られない薬草があってね」
ファル「サウディア地方の薬草探しか?」
テラ「そうなの。南の暖かい地域に自生する薬草で、薬草茶はとても美味しいらしくて。私、気になっちゃって 笑」
ファル「美味い薬草茶か〜!俺は薬草には詳しくないけど、一緒に探すよ!どんな薬草なんだ?」
テラ「ムーンピーチフラワーっていうんだけど…あ、本に載ってるの。リーフ、本を出してもらえるかな^^」
リーフ「うん、ちょっと待ってて」
そう言うとリーフはどんぐりの中に消え、再びどんぐりから姿を現しました。
姿を現したリーフは小さな姿ではなく、テラと同じくらいの背丈のリーフになっていて、手には薬草の本を持っています。
そして、その本をテラに渡しました。
もし精霊が見えなければ、テラの手にいきなり本が現れたように見えますが、ファルにはリーフが見えているので、リーフが本を持って現れ、それをテラに渡したことは分かります。
しかし、本はどこから持ってきたのか?と不思議に思いました。
ファル「え?どうなってんだ?」
テラ「物を持ったまま依り代に入ると、依り代の中に置くことが出来るそうなの。依り代の中に置いていた本をリーフに出してもらったのよ」
テラは、依り代の中に物を置いておく、という事を説明をしました。
ヘリックス「考えたことなかったけど…私も物は持てるのよ。持ったまま依り代に入る、依り代の中に置いておく…依り代にこんな使い方があったなんて、どうして今まで気付かなかったのかしら 笑」
テラの説明を聞いたヘリックスは、驚きつつも、依り代の中に物を置くことが出来るという事を知り、嬉しそうに笑いました。
リーフ「生物以外で自分が持てるものなら、なんでも入れられるよ」
ヘリックス「これは面白いわね。依り代の中に置いておきたいもの、いっぱいあるわ」
ファル「テラの荷物が旅をしてるのにやけに少ないなと思ってたが、そういうことだったんだな。ヘリックス、俺の荷物をヘリックスの依り代に置いといてくれ!頼む!」
ヘリックス「もちろん、いいわよ^^」
さっそく、ファルの重い荷物はヘリックスの依り代に入れてもらい、手荷物を入れたショルダーバッグだけを肩に掛けます。
ファルは旅人とは思えない身軽さになり、依り代の新たな使い道の発見でヘリックスとファルは大喜びなのでした。
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テラ「次の町まで歩いて行くから4日間くらい野宿になるけど…ファルは大丈夫?」
ファル「ああ、野宿くらい全然平気だ!むしろずっと野宿でも構わないぞ 笑」
4人でわいわいと野宿に適した場所を探しながら、ノーサンロードを南へと進んで行きます。
そうして、日が傾き始めた頃。
ファル「そろそろ野宿をする場所を決めなきゃだろ。このあたりはどうだ?」
リーフ「そうだね、きれいな湧き水もあって、街道も近いし。いいと思う^^」
テラ「それじゃ、今日はここにしようか^^」
野宿の場所を決め、テラとファルが焚き火と食事の準備をしている間にリーフの緑のテントがふたつ作られました。
テントの周囲には、胸の高さほどの緑の壁も作られています。
ファル「すごいテントだな!それに、壁まで!リーフはこんなことが出来るのか。すごいんだな!」
ファルはリーフの力を初めて見て驚きつつも、リーフが作ったテントを触ってみたり眺めてみたり、中に入ったりして感心しきりです。
リーフ「どういたしまして。テントはふたつ作ったから窮屈にはならないし、快適な夜を過ごせると思うよ^^」
テラ「テントはふたつだから、リーフと私、ヘリックスとファル、でいいかしら」
ファル「ああ、そうしよう^^」
4人で火を囲んで、テラは久しぶりに誰かと食事をする楽しさを思い出しました。
ファル「テラ、俺こんなもの持ってるんだ!どうだい?食べてみないか?」
ファルは小さな麻の袋から茶色いナッツのようものを手に取りだしました。
テラ「え、これ何かしら?」
ファル「アーモンドっていうんだ。ナッツの類だね。うまいよ!なかなかお目にかかれないんだが、先日たまたま手に入れたんだ^^」
テラ「これがアーモンド!とても貴重じゃない?いいの?」
ファル「いいよ!ぜひ食ってみてくれ^^」
テラ「うわぁ!いただきます!!」
テラは珍しいアーモンドをファルから貰い、生まれて初めてアーモンドを食べました。
テラ「美味しい~!くるみと全然違うわね!焙煎してるのかな。すごく香ばしい!」
(父さんと母さんが亡くなって以来かな。誰かと一緒に食べるのってやっぱり楽しいよね^^)
テラ「あ!リーフ、あれ、出してくれないかな。串焼き!」
リーフ「うん、いいよ^^ すぐに出すね」
リーフはどんぐりに入って、大きなリーフになって串焼きを持って現れました。
テラ「ありがとう、リーフ^^ ファル、アーモンドのお礼と言ってはなんだけど、串焼き、どうぞ^^ 火でちょっと炙ってみて」
ファル「お!美味しそうな串焼きだ!ありがたく頂くよ^^」
ファルはもらった串焼きを火で炙り、大きく口を開けてパクッと頬張ります。
ファル「こりゃ美味い!今買ってきたみたいに肉が柔らかくて新鮮じゃないか!」
テラ「買ってすぐにリーフの依り代に保管してもらってたの^^ 鮮度はそのままなのよ^^」
ファル「ということは、ヘリックスの依り代も鮮度がそのままなのか!?」
ヘリックス「試してないから分からないけど、そうなのかもね。依り代、便利すぎない?笑」
ファル「今度試してみようぜ!な!ヘリックス!」
ニコニコと楽しそうに食事をしているテラを見ながらリーフは思いました。
(テラが笑ってる。ぼくには出来ないから…ファルのおかげ..)
そんな様子を見つめながら、ヘリックスはふふっと微笑むのでした。