The Acorn Spirit's Journey

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【本編14 冒険編】「子孫繁栄の加護」

【本編14 冒険編】「子孫繁栄の加護」

大人も楽しめる絵本のイメージで物語を書いています。
よかったら読んでください😊


 

#本編14 冒険編

焚き火を囲んでの夕食も終わり、後片付けも済ませて、リーフとテラ、ヘリックスとファルはそれぞれのテントに分かれ、一夜を過ごします。

外は静かな夜で、星々が輝く空の下、焚き火の残り火がチラチラと燃えています。

ヘリックスとファルのテントでは、契約を結んだばかりのふたりが契約についての重要な話をしています。

テントの中はひとつのランタンの明かりだけが静かに揺らめいていて、彼らの会話が小さく反響していました。

「ファル、契約のこと、説明しておくわね」
ヘリックスは優しい声で言いながら、ファルの目を見つめました。

「ああ、よろしく頼む」
ファルは軽く頷きます。

「若返りについてはもう分かったと思うけど、もうひとつあるのよ。それは世代交代よ」

「そうだな、世代交代って言ってたよな」

「分かりやすく言うと、ファルが子供を持つまでが契約よ。子供を持てば契約は自然に消滅するわ。私はあなたの家族が代々続くよう、子孫繁栄、世代交代を見守る。これから7代先まで私の加護が続くわ。私は契約した守り人の子孫繁栄を確約するの」

「子孫繁栄…そういうことか……」
ファルは少しの間考え込みますが、切り替えるようにヘリックスに訊ねます。

「ところで、ヘリックスはそれで何の得があるんだ?」

「あなたは守り人でしょう。守り人の血を絶やさないのはとても重要な事よ」

「なるほど。そりゃ重要だ。今は守り人の数も減っているからな」
ファルはヘリックスの答えに納得します。

「手首に私の紋が刻まれたでしょう?子供が生まれたら契約が消滅して紋も消えるけど、加護はそのままだから安心して。ただ、結婚相手を見つけるとか、そういうのは手助け出来ないし、事故で死んだりしてもそれは助けられないわ。
普通に生活して、結婚して。子孫繁栄の加護で必ず子宝に恵まれるわ」
そう説明したヘリックスは穏やかににっこりと微笑みました。

「よし、わかった」
ファルはしばらく考えた後、決意を込めたように答えました。

「だから、私から離れても大丈夫よ。一緒にいる必要は無いの」
ヘリックスはさらに付け加えます。

「いや、俺はヘリックスと過ごしたいから契約したんだ。契約するときにも言ったけど、俺は守り人であることに誇りを持ってる。ヘリックスは俺を必要とすることは無いのかもしれない。けど、話し相手くらいは出来るぜ」
そう言ってファルはニカッと笑ったのでした。

「そうね笑 でも、自由に恋愛してよ?むしろそうしてくれないと困るのよ。
そのために若返ったんだし。あ、テラはダメよ?テラはリーフのものだから^^」

「あはは。テラはまだ子どもじゃないか笑」

「あなたも外見はずいぶん幼くなったわよ?笑」

「俺は中身だけはいい歳したおっさんだからな!そんな心配はいらないよ笑
それに、リーフはテラに惚れてるだろ。見てたら分かるよ笑
リーフのことは俺に任せてくれ!俺はこれでも昔はモテモテだったんだ^^」

「ふふっ モテたのは精霊に、じゃないの?ファルの血の匂いってすごく精霊好みだと思うわ」

「ははは。まあな!笑」

そう言って笑っていたファルは、少しの間を置いてから神妙な面持ちでヘリックスに話しかけました。

「それはそうと…ヘリックスに言おうかちょっと迷ったんだが…あの場所を通りかかったのは偶然じゃなくてな。はっきり場所が分かってたわけじゃないが、守り人を探している精霊がいることは知ってたんだ」

「そうなの?」

「前に俺が契約してた精霊が突然現れてな。ノーサンロードを南下して行くと守り人を探している精霊が居るからって教えられて」

「前に契約してた精霊って誰なの?」

「……あー、、えっと。俺は実はもう220年くらい生きてんだ。その精霊とは訳あって離れたけど、そいつとは俺が22歳のときに契約して。俺は不老になって150年くらい一緒に過ごした。で、離れて、俺は年をとって、今なんだ」

(22歳のまま150年、どおりでね。そういうことなら…)

「スターチスの精霊?」

「そう。スターチスの精霊で名前はリモって言うんだ」

「永久不変、でもどうして離れたのかしら?そのままでもよかったでしょう?」

「分からないが…俺を自由にしたかったのかもしれないな」

「自由に?」

「俺、子ども好きだからさ。あっちこっち行ったけど、行く先々で子どもらと仲良くなって、遊んで。子供がいたらいいよなっていつも言ってたからな。
俺、長男でさ。歳が離れた弟や妹たちの面倒をよくみてたんだ。だから、思い出してね。可愛いなって」

「リモは人の気持ちを引き立てるから。それでファルのことを想って離れたのかしら」

「そしたら、離れて50年も経ってるのに突然現れたんだ。そしてヘリックス、君と出会った」

「急に現れたのも、ファルのことをずっと記憶しているからよ。それにしても……」
ファルの話を聞いて、ヘリックスはちょっと引っ掛かることがあるようです。

「俺は若返ってヘリックスに再び長い時間を与えてもらった。俺は守り人として、それに報いなきゃいけないと思ってる」

真剣な眼差しでヘリックスを見つめ、ファルは守り人として決意を固めるのです。

ファルはヘリックスの真剣な眼差しを受け止め、しばらく沈黙が続きました。
その静けさの中で、ヘリックスにはある考えが浮かび上がりました。

 

(ヘリックスの心の声)

実は私のところにもリモが来たのよね
もうすぐここに年配の守り人が通りかかるから契約してあげてほしいって

だけど、どうやって現れたのかしら?
ファルのところにも、私のところにも?
精霊はそんなにあちこちを移動したりしないわ。
リモの性質を考えたら、なおさら変だわ。

もしかして…

 

どんぐり精霊と少女の冒険

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