【本編15 冒険編】「力の解放」
大人も楽しめる絵本のイメージで物語を書いています。
よかったら読んでください😊
#本編15 冒険
一方その頃、リーフとテラのテントでは。
「アーモンド、美味しかったなぁ!アーモンドはとても貴重だから高価なの。今まで見たこと無かったもの 笑」
「アーモンドが栽培されている場所は確か南の島だけだったかな。貴重な品だったね^^」
「ファルって面白いよね。出会ってすぐは年配の人だったのに若返っちゃうし」
「あはは。それで今は一緒に旅してる 笑」
「ファルはすごいわ。ファルは、”精霊と過ごす時間は貴重で、それは守り人にしか出来ないこと、守り人であることが誇り”って言ってたわ。
私はそこまで考えてなかったの。でも、ファルの言う通りだと思ったの。
私は自分が守り人だってリーフに会うまで知らなかったけど、知ってからのリーフとの日々は、まるで夢の中にいるみたいよ。
精霊と過ごす時間はとても貴重で、それは守り人にしか出来ないこと。ほんと、その通りね。私も守り人であることに誇りを持ちたいと思ったのよ」
テラは、ファルがヘリックスとの契約時に話していたことをよく覚えていて、ファルの言葉に影響を受け共感したのです。
そんなテラに、リーフは思い切って訊ねてみました。
「テラは……テラは、ぼくの守り人になって、よかった?」
伏し目がちに質問するリーフに、テラはにっこり笑って即答します。
「もちろんよ。リーフと一緒にいられて、私は幸せ。リーフの守り人になってよかったし、嬉しいよ^^」
リーフはテラの言葉を聞いて、つっかえていたものが取れたような、内から力が溢れて来るような、そんな感覚を覚えました。
リーフの瞳が光を帯びているのに気付いたテラは、リーフに訊ねます。
「そろそろ血を飲む?」
「うん、お願い…」
テラはいつものように指先に針をちょっと刺して血を出します。
「毎日ありがとう、テラ」
リーフはテラの指を小さな両手で掴んで口に持っていき、指先の小さな傷口の血をペロッと舐めて、血が出なくなるまで吸うのです。
といっても1分にも満たないほどの僅かな時間で血の摂取は終わります。
摂取する血はほんのちょっとだけなのです。
(こうやって傷口からリーフ菌…じゃなくて、精霊因子が私の体内に入ってるのねぇ)
テラはリーフが血を摂取する様子を観察するように眺めながらそんなことを考えていました。
血を摂取した後、リーフはぼんやりと体全体から光を発しながらテラと同じくらいの背丈に変化しました。
「リーフ?」
テラはリーフの異変に気付きました。
いつもなら、大きな姿に変化した後は光は薄くなって消えるのですが、光はますます強まっていきます。
ランタン一つだけの薄暗くなったテントの中で、リーフの緑色の瞳はキラキラといつにも増して強く煌めいていて、リーフの体は発光する放射状の白い光に覆われて、背中に集まる光の粒は羽の形をかたどっているようにも見えました。
こんなふうに強く光を発するリーフを見たのは初めてで、テラは驚きました。
「リーフ?どうしたの?」
心配したテラがリーフの顔を覗き込むようにして優しく声を掛けました。
「力を、制御できなくて…」
そう言ったのと同時に、リーフはテラを引き寄せて強く抱きしめました。
突然抱きしめられてもテラは特に動じることなく、心配そうに優しくリーフに声を掛けます。
「大丈夫?」
「…少し、このままで…」
リーフには、急に力が制御が出来なくなった理由が分かっていました。
理由が分かっていたからこそ、テラを抱きしめずにはいられませんでした。
抱きしめられて、テラはリーフの背中側がよく見える格好になり、背中に集まる光の粒は、リーフの緑のマントの端からキラキラと光の粒に変化しているのが分かりました。
(マントが光の粒に変わっていってる…そういえばマントは精霊の力で生成されてるって言ってたわね)
2分なのか3分なのか、それほど長くない時間が過ぎて、光は次第に薄れて消えて行き、薄暗いテントの中でランタンの明かりだけが静かに揺れていました。
「もう大丈夫だから…ごめ..」
と言い終わる前に、リーフは何も無かったかのように小さな姿に戻り、その場ですやすやと眠ってしまいました。
リーフの力の発現を目の当たりにしたテラは、なかなか寝付けずにいました。
(あんなリーフ、初めて見た…びっくりしたけど…全身から溢れる光がすごく綺麗だったな。それに、ふわっとしてて温かかった…リーフの光って、温かいのね)
初めてリーフの光に包まれたテラは、その温かさになんだかホッとするような穏やかな安心感を覚えたのでした。