【本編21 冒険編】「赤いベゴニア1」
大人も楽しめる絵本のイメージで物語を書いています。
よかったら読んでください😊
#本編21 冒険編
ファルの提案で、男同士女同士でテントを分けた次の朝。
朝食を済ませ、荷物も片づけ、さあ出発!となった時、ファルはリーフに声を掛けました。
「リーフ、どうする?俺の肩に乗るか?」
ファルの言葉を聞いたテラは「え!?」と、とても驚きました。
このファルの声掛けは、テラに花を贈るための手伝いをするとリーフと約束をしていたからです。もちろんテラは知る由もないのですが。
リーフは「うん!そうする^^」と嬉しそうに笑って、テラにお願いをします。
「テラ、ファルの肩に乗るけど、いい?」
「ファルの肩に?…いいけど、どうしたの?」
「うん、ちょっとファルとお話したいの。ごめんね、テラ」
リーフはふわりとテラの肩から離れ、ファルの肩にストンと移りました。
リーフがテラ以外の守り人の肩に乗るのは初めてのことです。
ヘリックスは「男同士の友情に目覚めたのかしら」とクスクスと笑っています。
「リーフが…私以外の守り人の肩に乗るなんて想像すらしたこと無かったんだけど…」
ヘリックスは少しからかうように、クスクスと笑いながら困惑気味のテラの顔色を窺います。
「あら、テラは寂しいの?リーフを取られたって感じかしら 笑」
「そ、そんなこと無いわよ。リーフの最初の守り人は男性だったし!リーフは男の子だから男同士で話すことがあるのよ、きっと。リーフに同性の話し相手が出来て、私は嬉しいわよ」
「ふふっ まあでも、確かにそうね^^ リーフも楽しそうだし、よかったわ」
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「テラの肩もいいけど、ファルは男だから肩が太いし乗りやすくていいね」
「お?そうか!それはよかった^^ いつでも乗っていいぞ!」
「うん、ありがと^^ それで、お花なんだけど。。ぼく、贈りたいお花を考えたの。ベゴニアってお花で、できれば赤いベゴニアがよくて」
「俺は花は詳しくないからな。花言葉とかあるんだろ?」
「花言葉は”幸福な日々””愛の告白””片思い”なの」
「ずいぶんとロマンチックだな…聞いてるこっちが恥ずかしいが 笑」
「ぼくにぴったりかなって。ぼくは花が咲いてる位置が分かるから、歩いてて近くで見つけたら教えるね^^ ここまで旅をしてきて、所々でベゴニアが自生している場所はあったの。だから、この先でもたぶん見つかると思うから」
「よっしゃ!見つけたら言ってくれな!」
リーフとファルのふたりは、テラとヘリックスに会話を聞かれないよう、声の大きさに気を付けながら、ある程度の距離を保ってテラとヘリックスの後ろを歩いて行きます。
「そういえば昨日な、リーフが寝てからテラがテントに来たんだ。リーフにおまじないするって」
ファルはふと、昨夜の事を思い出して小声でリーフに話しかけました。
「おまじない?」
「あ、知らなかったか、あれっ…」
「え、教えて。気になるよ」
「ま、いいのか?たぶんリーフは嬉しいだろうからな…あー、えっと。
テラが子供の頃、寝る時に母親がおまじないをしてくれてたらしくてな。”今日よりもっと幸せな明日が待ってるわ、おやすみなさい”っておでこにキスしてな。
それを、リーフにしてたんだ。毎晩やってるって言ってたぞ。日課だって」
「そうなの!?ぼく全然知らない…」
「ずっとやってんのか?って聞いたら、リーフが初めて大きい姿になった日からって言ってたな。リーフにはいつも幸せでいてほしいってさ」
おまじないの話を聞いたリーフの目から、ポロポロと涙がこぼれました。
リーフが初めて大きな姿になった日。それは、リーフが生まれて初めて抱きしめられた日で、生まれて初めて泣いた日です。あの日の事は、これから何年何百年経とうと絶対に忘れない、とても大切な日なのです。
(あの日から毎晩、テラはぼくが眠ったあとにおまじないをして、ぼくの幸せを願ってくれてた…)
「おい、リーフ?大丈夫か?ごめんな。そんなに泣くなんて思わなかったよ」
ベゴニアを見つけるために力を使っていたリーフの緑色の瞳は、光に当たって一層キラキラと輝いて、涙を溜めてポロポロとしずくが零れる様は、まるで目から宝石の粒が零れ落ちているようでした。
ファルはそんなリーフを見て、とっさにリーフを手のひらに乗せ換え、指先で宝石のような涙をぬぐって手のひらで優しく包み込みました。
「ありがとう、ファル。知らなかったら、ぼく、テラのこと何も知らないのと同じだもの。ほんとにありがとう。教えてくれて。これからも色々教えてね」
「ああ、もちろんだ!だから、もう泣くな?嬉しいんだろ?笑おうぜ!な!」
「はは。そうだね 笑」
そんな話をしながら歩いていると、リーフがベゴニアが自生している場所を感知しました。
「ファル!ベゴニア、見つけたよ!ここからちょっと山側に入るんだけど、いい?」
「よし!それじゃ、テラとヘリックスには適当に言ってちょっと待っててもらうか」
「テラからぼくの依り代を預かってほしいの。摘んだらすぐに保管したいし」
「了解!」
テラからどんぐりを預かり、ファルとリーフはベゴニアを摘むために森の中へ入って行きました。
獣道のような少し荒れた道を草をかき分けながら300mほど進んで行くと、湿気のある鬱蒼とした森の中に、お目当てのベゴニアが咲いていました。
「あったよ^^ 赤いベゴニア!」
「おう!よかったな!それにしてもすごいな、リーフは。離れた場所からでも分かるんだな。よし、これを摘むか」
「あ、でも、リボンみたいなの、ほしいかも…」
「ああ、リボンか。確かにリボンがあると花束らしくていいよな。そうだな…あとでヘリックスに聞いてみるよ。とりあえず花を摘んで戻ろう。ふたりを待たせてるしな」
リーフは摘んだベゴニアをどんぐりの中に仕舞い、ファルと共に来た道を急いで戻ったのでした。
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リーフとファルはテラとヘリックスが待つ街道沿いに戻り、リーフはいつものようにテラの肩に乗ります。
「ごめんね、お待たせ。テラ」
「ううん、いいよ。ファルは大丈夫なの?」
「え?あ、うん。もう平気みたいだよ」
テラとヘリックスには、”ファルはお腹が痛い”ということにして、待ってもらっていたのでした。
ファルはヘリックスにこっそり尋ねます。
「待たせてすまないな。ところでヘリックスはリボン持ってるか?」
「え?リボン?何にするの? というか、お腹痛いって噓でしょ 笑」
「ははは 笑 実はリーフがテラに花を贈りたいってな。目当ての花があったから摘んでたんだよ。で、リボンだ」
「ああ、なるほど。ふたりで何してるのかと思ったら、そういうこと 笑 仕方ないわね」
ヘリックスは依り代に一旦入り、ピンク色のリボンを持って現れました。
ヘリックスの髪にはいつもリボンが結んであり、リボンが好きで、綺麗な色や柄のリボンを収集しているのです。
「リーフがテラに贈るのならリボンはピンクがいいと思うわ。私のリボンは特別製なのよ 笑」
「ありがとうなヘリックス!感謝するぜ!!」
ファルとヘリックスの協力もあって、無事に、テラへ贈る赤いベゴニアの花束が完成したのです。