【本編22 冒険編】「赤いベゴニア2」
大人も楽しめる絵本のイメージで物語を書いています。
よかったら読んでください😊
#本編22 冒険編
夕方ごろ、日が沈む前に今日の野宿の場所を決めた4人は、4人旅になって3度目の野宿の準備を始めます。リーフのテントが手際よく作られ、焚火と食事の準備をするテラとファルの様子が見られます。
ファルはヘリックスの依り代から自分の荷物を出してもらい、荷物の中から干し肉とナッツを取り出しました。
「ファル、果物は桃でいい?」
「おお、テラ、ありがとな!桃は甘くってうまいよなぁ!」
「ね!私も桃大好きなのよ^^ あと、そうね。ローズマリーパンがあるけど、どう?」
「ローズマリーのパンなんてあるんだな」
「私も初めて食べるの。ファルもひとつどうぞ^^」
「ありがたくいただくよ^^ 次の町ではもっと買い貯めしないとな。依り代に入れられるってのはほんとに有難い。いつもは町に2~3か月滞在して仕事して稼いで、また旅に出るって感じだったんでな。今は手持ちがあるからいいけど、この先、立ち寄った町に長く滞在することは無いだろう?そしたら、資金が尽きてしまうからな。今後の旅の資金をどうするか…」
「そっか…私たちに合わせる形になるから…あの、私たちはね、薬草採取しながら旅をしてて、立ち寄った町で薬草を買い取ってもらって、って感じなの。ファルも一緒に薬草採取するのはどうかな」
「薬草採取か、そうだな……それが一番手っ取り早いか」
「リーフが薬草の場所を教えてくれるから、薬草が見つからないってことは無いのよ^^」
「そりゃいい!リーフ様様だ 笑…そういえば、テラのことあまり聞いてなかったけど、リーフとはもう長いのか?」
「リーフとは…1か月半ちょっと…もうすぐ2か月になるかな」
「どうして旅をしてるのか聞いてもいいか?言いたくなければ、詮索はしないが」
「大丈夫よ^^ 私は3年前に両親を亡くして、ひとりで薬草採取して生活してたの。そしたら2か月ほど前にリーフが突然現れてね。私は自分が守り人だって知らなかったの。とても驚いたけどリーフは小さくてかわいいし笑 私は独りだし。リーフが居たら毎日楽しいかなって思って契約したの。そしたら後になって、契約で不老不死になったって知ってね。リーフったら、契約の時に云わなかったのよ 笑」
テラは笑いながら話しますが、ファルは契約の話に大変驚きました。
「不老不死か!それはすげーな…そんな力がある精霊は滅多にいないというか、俺は各地を転々としてきたし、何人もの精霊に会ったことがある。不老や不老長寿は知ってるが…不老不死なんて初めてだ。しかし、契約の時に言わなかったのはダメだ。人が人でなくなるみたいなもんなのに、それを言わないとは…リーフが怖いぜ…」
そう言ってファルがちらっとリーフのほうに目線を向けると、リーフはサッと横を向いて聞いていないかのような素振りです。
「そ、それで、旅をしようってなったのよ。歳を取らないから同じ場所には長く住めないねって」
「そうか…。テラはいま何歳なんだ?」
「いまは15歳。でもこれからもずっと15歳ね 笑 もうすぐ誕生日なんだけど年を取らないから意味がなくなっちゃった 笑」
「意味がないことはないぞ。誕生した日だ。誕生日は、生まれてきたこと、生んでくれたことに感謝する日なんだ。だから、不老不死になっても祝っていいんだ。テラが年を取らなくても、誕生してくれたことに感謝するぜ、俺は^^」
「そっか…そうよね。私、勘違いするところだったわ。ありがとう、ファル^^」
テラはリーフの守り人になったことを後悔はしていないのですが、誕生日が近くなってきて複雑な思いを抱えていました。しかし、ファルが”誕生日は生まれてきたこと、生んでくれたことに感謝する日”と言ってくれ、救われたような気持ちになったのでした。
「それで、誕生日はいつなんだ?」
「12月29日よ^^」
「1か月ちょっと先だな。そのときはちゃんとお祝いするから!な!」
そう言ってファルはいつものようにニカッと笑いました。
「ふふっ ありがとう、楽しみにしてるわね!」
リーフとヘリックスはふたりのやり取りを黙って聞いていました。
「あ、ごめんな。テラとばっかり話しちまって」
「あら、全然かまわないわよ^^ テラの誕生日は12月29日って聞けたし。ね?リーフ^^」
「うん。テラの誕生日、必ずお祝いするよ!」
「ありがとう^^ 楽しみが増えたわ」
テラとファルは食事が終わって、片付けをしたり、寝る準備で動いているので、ヘリックスとリーフはふたりで焚火のそばに座ってなにやら話し込んでいます。
「リーフは誕生花ってわかるかしら」
「誕生日と誕生花の関連はよくわからないけど、花言葉なら」
「12月29日の誕生花はオドントグロッサムね。他にもあるんだけど、テラはオドントグロッサムだわ」
「特別な存在。誕生日にオドントグロッサムを贈れたらと思ったけど…」
「高い山でないとなかなか見つからないわね」
「そうだよね…」
「リーフは今日、テラに花束をあげるの?」
「あ、そうだ、リボン!ありがとう、ヘリックス^^」
「どういたしまして。それで、どんな花を用意したの?」
「あ、、えっと。。赤い…ベゴニア…」
ヘリックスにどんな花かを聞かれ、なんとなく照れくささを感じたリーフは、視線を泳がせながらボソボソと小さな声で答えました。
「赤いベゴニア!とてもいいわね!貰った時のテラの反応が気になるわ^^ テラが戻ってきたらここで花束を渡してくれない?」
「え、嫌だよ。テントに入ってから渡す!」
「…ケチねぇ」
「ケチって……面白がってるでしょ、、」
「ええ、もちろん。面白いわよ^^ これが面白くないなら、世界のすべてが面白くないわね 笑 私は世代交代、子孫繁栄の象徴だもの。今まで何人もの守り人の告白を見たわ。みんなそれぞれ、素敵な告白をしていたのよ。でも、精霊の告白は初めてね!ぜひ見たいわ^^」
「絶対見せたくない…」
そんな会話をしていると、テラとファルが焚火の場所に戻ってきました。
日が沈み、辺りはすっかり暗く静まり返っていて、冬の空気は冷たく澄んで白い吐息が空に昇ります。
「日が沈むとやっぱ寒いな!温まってから火を消そう」
「寝る前にしっかり温まらないとね。テントに入ったら即毛布に包まるわ 笑」
焚火でしっかりと温まった後は、火を消してそれぞれのテントに向かいます。
今夜はいつも通りの、リーフとテラ、ヘリックスとファルに分かれて夜を過ごします。
リーフはテントに入るなりどんぐりに消えて、大きな姿で赤いベゴニアの花束を手にテラの前に現れました。リーフの霊核は、緊張のせいかキュッと力が入り硬くなっているようで、リーフもそれを感じて、さらに緊張感が高まるのでした。