【本編25 冒険編】「共通の目的」

大人も楽しめる絵本のイメージで物語を書いています。
よかったら読んでください😊
#本編25 冒険編
ファルとリモの熱い再契約シーンをニコニコしながら眺めていたヘリックスですが、ひと段落したところでファルに声を掛けます。
「さて、どうしようかしら。とりあえずリーフに入ってもらう?」
「リーフ起きてんのか?」
「ええ。たぶん気配に気づいたんじゃない?精霊が増えてるから 笑 リーフ、テントに入ってきて」
リーフがテントの外に来ていることに気付いていたヘリックスは、リーフにテントに入るよう促しました。
(ファルは…スターチスの精霊を愛してる…スターチスの精霊も…愛してるってどんな感情なのかな…)
テントの外で悶々と考え事をしていたリーフは、ヘリックスに呼ばれてハッと我に返ります。
「あ!ご、ごめんね。立ち聞きするつもりじゃなくて…」
「分かってるわ 笑 テラは起きてるの?」
「テラはまだ寝てる。精霊の気配が増えたから、ぼくだけ起きて。どうしたのかなって」
精霊の気配が増えたことに気付いたリーフは、何が起こってるのかと気になってヘリックスとファルのテントに向かったのですが、3人の様子にテントに入ることは出来ずに、テントの外で成り行きを見守っていたのでした。
「リーフ、紹介するけど、リモっていうんだ。俺の恋人だ」
「こ、恋人!」(精霊じゃなくて恋人って言った…!)
「私、スターチスの精霊なの。ファラムンドは私の恋人なの」
「!!」(守り人じゃなくて…恋人って言った…!)
一々驚くリーフの反応が面白かったけど、そこは敢えて見なかったことにして、ヘリックスは話を進めます。
「で、どうする?って話なんだけど」
「そ、そうだね。ぼくはファルとヘリックスに任せるよ…たぶんテラもそう言うと思うけど…」
リーフの言葉に、ファルは確認の意味を込めてリーフに訊ねます。
「リーフたちはそもそも、サウディアを目指して旅をしてるんだよな。薬草探しで」
ファルはリモと再契約したためヘリックスに着いて行く理由がなくなり、旅の目的によっては別々の道を行くことも考えなければと思ったのです。
「そうだけど、定住地探しの旅でもあるの」
「定住地探し?」
定住地探しと聞いて、ファルは自身のこれまでの旅を思い返しました。
「テラは不老不死だから一つの場所に定住できないの。だからテラとふたりでずっと暮らせる場所を探す旅なの」
「そうか。それだったら…俺も似たようなもんだな。俺は150年間、リモと一緒にずっと放浪の旅だったからな。定住地、見つかるのか?」
「テラには言ってないけど、ここしかないだろうなって場所は、最初から頭にあるよ」
「俺にも教えられないか?」
「ファルは150年も放浪して、分かってると思うの。定住できる土地なんて無いってこと」
「ああ、そうだ」
ファルは分かっていました。この大陸のどこにも、不老である守り人が定住できる土地など無いことを。
「だけど、この大陸のすべてを回ったの?」
「ああ、全部…いや、行ってない場所はあるな。エルナス森林地帯だ。え?まさか、エルナス森林地帯に定住するつもりか?」
エルナス森林地帯は東西約800km、南北約500km。この広大で深い深い森は方位磁石を狂わせるため、人を寄せ付けない未開の森林地帯となっており、その中心部にはセイヨウトネリコの巨木があります。

「なるほどね。それはいい考えだわ。守り人と一緒に住む土地でしょう?普通の人間はいない。エルナス森林地帯、いいと思うわ。リモもそう思わない?」
「たしかに、エルナス森林地帯なら誰の目を気にすることなく守り人と過ごせるわ。とても素敵ね…他の精霊や守り人もいるなら、村を作るといいかもしれないわ」
「そう。エルナス森林地帯に定住するなら、他の精霊や守り人も一緒にと思ってて。ファルは不老だし、一緒にどうかな。テラもそのほうが嬉しいと思うから」
「リモがいいってなら、俺は着いて行くだけだ」
「そうね。それじゃ、とりあえずこのまま旅を続けるってことでいいかしら」
話のまとめ役のヘリックスは、みんなで旅を続けるという方向で話を進めます。
「ぼくはテラと一緒にサウディアへ行くからね^^」
「いいぜ!まずはサウディアに行って、薬草探して、茶を飲むんだろ?ついでに他にも精霊と守り人がいたら誘ってもいいしな。定住地には人が多いほうがいいだろう?」
「私も守り人探さなきゃいけないし笑」
「ヘリックス、ほんと、申し訳ない」
「いいわよ笑 あ、私の依り代は…とりあえずファルがそのまま持っててくれる?」
「もちろん、俺が大切にちゃんと持っておくぜ」
「決まりだね。ファル、ヘリックス、リモ、これからも一緒に^^ 長い旅になるけどよろしくね」
こうして、テラ抜きでエルナス森林地帯で定住するということが決まり、4人はその共通の目的を持って、旅を続けることになったのでした。
そんな話をしていると、テラが起きて来ました。
リーフが居ないことに気付いたテラは、ファルとヘリックスのテントへやってきたのです。
「おはよう、ファル、ヘリックス。リーフこっちに来てるかしら」
「おはよう、テラ。ちょっと入ってきてくれ」
テントの中から聞こえたファルの声に導かれて、テラはファル達のテントに入ります。
「え!新しい精霊さん?」
「俺が昔契約してた精霊で名前はリモ。俺の恋人なんだ。さっき再契約して、リモも旅に着いてくることになったんだ。よろしくな!」
「え!え?ええ!?」
「私はスターチスの精霊でファラムンドは私の恋人なの。よろしくね」
「は、はい!私はティエラ、みんなテラって呼ぶの。よ、よろしく」
(こ、こいびと・・ファル・・なんだか色々すごい・・)
「私はまた守り人探しよ笑」
「あ、ああ、ヘリックス、そうよね!うん!」
「テラ、とりあえずぼくたちのテントに戻ろうか^^ 朝食とか出発の準備もあるし」
「そうね!じゃ、みんな、またあとでね!」
テラには何が何だかさっぱりで、衝撃すぎて思考が追い付かないようでした。