【本編29 冒険編】「フォールゴールド3」

大人も楽しめる絵本のイメージで物語を書いています。
よかったら読んでください😊
#本編29 冒険編
「ここがジオ・グローヴ・ガーデン…」
「ジオ・グローヴ・ガーデン。私も初めて来たわ」
透き通った水を湛える美しい池、色とりどりに咲き誇る花々、イチョウの木に囲まれた緑豊かな庭園、その庭園のそばには中世の洋風の小さな真っ白い建物が建っていました。石と木を用いた堅牢な構造で、アーチ型の入り口と窓が特徴的です。屋根はとんがり帽子のような形をしています。
精霊界の空に浮かぶ孤島の中で最も美しいと云われる孤島のひとつ、ジオ・グローヴ・ガーデンです。

「いらっしゃい^^ それじゃ、あまり時間も無いしさっそくだけど、ちょっと昔の話をしようか」
ジオは穏やかに静かに語り始めました。
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「約1,400年前の大飢饉は知ってるかな。
私はその頃、精霊王就任から1,500年ほどで力もあったのだけれど、人間界は日照り続きで水不足からの不作が2年、3年と続くような状況でね。そんな自然災害の前には力が及ばず、また、一揆など人が及ぼすものは言うまでもなく精霊の私にはどうすることも出来なかった。
大地を統べる精霊王になると、この大地、大陸すべてを己の力の影響範囲に含めることが可能になる。そして私は生命力と繁栄の象徴で、大地を伝ってこの力を発揮するんだ。
植物の生命力を極限まで高めることで飢饉をなんとか凌ぐことが出来たのは1年~1年半ほどで、水不足のため不作が続き、自然災害が大きくなってしまい、いくら生命力を高めても水不足の前に限界があるのは言うまでも無くてね。
その頃、空を統べる精霊王が数年間不在だったために、飢饉のさなか、オレガノの精霊カルバが抜擢され、就任したんだ。
カルバは自然の恵みを象徴としていて、飢饉の中でのその守り人の奮闘と活躍は素晴らしいものだった。もちろんそれはカルバの協力があってのことで、精霊界は空を統べる精霊王としてカルバが適任と判断したんだ。
天候を操る力を得たカルバは、飢饉の大陸全土に雨を降らせたよ。
ただ降らせばいいというわけではなく、適正な地に適正な量の雨をコントロールしながら降らせ続けたんだ。空を統べる精霊王にはそれが出来るからね。
そうして乾いた大地は潤いを取り戻し、私も思う存分に力を使い、ようやく飢饉は去ったんだ。
こういったことから、精霊王の不在期間を作ってはならないと考え、精霊界の意志で、次期精霊王となるべく精霊を生むことが決定したんだ。そして、精霊王の代替わりは約3,000年ごとに行い、もうすぐ私が代替わりする。
どんぐりが選ばれた理由は、長寿や永遠の象徴、成長や発展の象徴、保護や安全安定の象徴、自然の豊かさと繁栄の象徴、生命と豊穣の象徴、生態系の健全なバランスを維持し、困難に対する耐性や逆境を乗り越える力もある。どんぐりは多面的に、広範囲にカバーできる力を擁するからだよ。
これだけ広範囲に象徴を持つものはどんぐり以外に見当たらないし、次期精霊王として大地を統べるのにピッタリなのはどんぐり以外に考えられず、精霊界はその大いなる成長の可能性に賭けたんだ。
代替わりまで約1,000年となった頃に君が誕生したのは、1,000年の期間を経て成長を遂げてくれれば、と考えたからだったんだ。
私は大地を統べる精霊王として、飢饉が起きないよう努力したけれど結果的には力が及ばず、己の力のなさに心が折れそうになった。もっと多面的に色んな事が出来たらと何度願ったか分からない。
そして、空を統べる精霊王の不在がどれほど痛手だったか、二度とこんなことが起きてはならない、起こしてはならないと誓ったんだ」
ジオは深い思いを込めて語り続けました。
そしてリーフは、じっとその話に耳を傾けていました。
「ほとんどの精霊は完成された状態で生まれるけれど、どんぐりの君は未完成で生まれたね。成長する君は、その可能性をどこまでも広げられるし、広げてほしいと願った。
ただ、未完成で生まれた故、君は酷く傷ついて、隠れてしまった。不安定で儚くて脆かったね。
精霊界はずっと君を見守っていたんだ。正直なところ、一時はどうなるかと冷や冷やしていたけど、今、君がこうして私に会いに来たということは、とても良い方向に向かっているからだと思うんだ。
そうでなければ、会いには来ないだろう?
君から会いに来てくれた、これだけで十分だ。
君がこの自然界をもてなす存在であるなら、君に自信を取り戻させてくれた人はこの世界で唯一、君をもてなす存在だ。この世界で唯一の君の守り人を大切に。
そうすれば必ず、君は君のあるべき姿になれるから」
ジオの言葉はリーフの心に深く響きました。
「この世界で唯一、ぼくをもてなす存在…」
「そうだ、私の守り人を紹介しておこうかな。ちょっと待っててくれるかい?」
そう言ってジオは庭園の脇に立つ白い建物に入っていき、若い女性と共に腕を組んで仲睦まじい様子で出てきました。
「紹介するよ。私の守り人でありパートナーのイヴィだ」
「こんにちは。初めまして、ジオの守り人でイヴィというの。よろしくね」

「イヴィと私は結婚しててね。結婚したのはそれほど昔ではないのだけど。彼女は不老長寿なんだ」
「けっ、結婚…人と?」
「イチョウの精霊の私は守り人が必要なわけでもなく、血が必要というわけでもないけど、彼女を愛しているから。だからイヴィに懇願したんだ。私と共に生きて欲しいと。
私の契約は、契約時に一度だけ血をもらって守り人を不老長寿にするんだ。でも、守り人は”人”だから。愛する女性とずっと共にいたいなら、プロポーズしないとだろう?人の習慣に合わせるのも大事なことだと私は思っていてね」
そう言ってジオは優しそうに微笑みながらイヴィを見つめていました。